ミチクサダイアリー

飽き性を克服するべく、もう一度だけ挑戦することにしました。ブログ。

「性的マイノリティ」に対して過剰反応を示したcomico(コミコ)とマンガボックス

無料で漫画が読めるウェブサイト「comico(コミコ)」と「マンガボックス」がほぼ同じタイミングで「性的マイノリティ」に対する過剰反応を示しました。

◆comico 「同性同士の接吻(キス)」を「過剰なわいせつ表現」であると位置づけた


comico絡みの一連の騒動はこちらの記事が詳しいです。

こちらの記事ではTwitterの関連ツイートをまとめながら「comico運営は同性愛を差別している」と強く批判しています。
どうやらcomicoの運営は「同性同士の接吻」などを「過剰なわいせつ表現」と位置づけているようです。
異性の接吻は「過剰なわいせつ表現」とは認められず、スルーされていることを踏まえると確かに「同性愛を差別」しています。

ボーイズラブガールズラブ(百合)問わず、同性同士のキスシーンを含む作品が対象になるようです。
上記の記事内でも引用されている瀬尾はやみさまの以下のツイートがあります。

「朝からcomicoの件を検索して「BLがランキング上位を占めてる状況は控えめに言っても吐き気する」やら「マイノリティだから仕方ないと思う」やら出てきてブレイクダンスしながらまとめて蹴倒したい気持ちに」

これによると、もともとボーイズラブ作品がランキング上位に食い込むなどしており「人気」だったようです。
昨今は私のようにボーイズラブ作品を愛好し、そのことを自嘲して「腐女子」と自らを呼称する女性たちが増えてきました
ランキング上位にボーイズラブ作品が食い込むのは、「腐女子」の数が急増したことが背景にあるのだと思います。

その一方で、ボーイズラブ作品は常に過激な性描写を含むと考えられています。
確かに人気のあるボーイズラブ作品の多くに性描写が含まれます。
そのためボーイズラブ作品を女性向けポルノと断言してしまう人もいるほどです。
(性描写のないものも当然ありますが、そのことはあまり知られていません。)

ボーイズラブ作品が「ポルノ」としてみなされ、そのうえで排斥されるのは
女性が主体的に性描写を消費するべきではない、という考えを持つ人がいるからでしょう。
女性は消費される側の性であり、性欲を有していない。だから女性が性描写を消費することはない
こうした考えに基づき、女性が主体的に性描写を含む作品に触れることを嫌悪する流れが存在します。

今回comicoは「同性同士の接吻」を「過剰なわいせつ表現」と位置づけました。
このcomico基準がもし一般的になるとどうなるでしょう。
おそらく芳文社の雑誌「まんがタイムきららミラク」で連載中の人気作品「桜Trick」あたりが即アウトです。

桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)

桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス)

 

 ▲毎話必ず女の子同士のキスシーンありcomico基準でいけば発禁必須。

女性同士の場合は従来の「消費される側の性」に当てはまるため問題にされることが少ないのだと思います。

今回comicoはボーイズラブガールズラブを問わず制限をかけているようです。
(具体的にどの作品が削除されたのかが明らかになっていないので何とも言えないところではあります。)
しかしながら人気を集めていたボーイズラブの方が問題視されがちだった、といっても過言ではないでしょう。

comicoの例では性的マイノリティへそれ自体の差別というよりは、
性描写(あるいはそれに類するもの)を消費する人たちへの畏怖が背景にあるように思えます。
これはつまり同性愛描写は「ポルノ」として消費されるものだという認識があるということ。
AVなどで「レズもの」「ゲイもの」みたいに「ポルノ」のジャンルのひとつとして同性愛が出てくることがあります。
ただ、それ以外を「ヘテロもの」とか言わないですよね。要はそれと同じことです。
同性愛描写は特殊なポルノの一ジャンルとして消費されるものと考えられてきました。
そしてそうしたポルノ(と思われるもの)を女性たちが主体的に消費すること自体も忌み嫌われる行いです。

以上の点から、comicoの例は単なる「性的マイノリティ」への差別だけでなく、
もっと複合的な要因が背景にあるものと考えられるのです。

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◆マンガボックス 性的マイノリティからのクレームを恐れた講談社の決定を受け連載終了へ

マンガボックスで連載していた「境界のないセカイ」という漫画の連載終了が決まりました。
講談社性的マイノリティからのクレームを回避するためにこの漫画の単行本の発売中止を決定、
それにより収益の見込みがなくなったためにマンガボックスでの連載が終了したとのこと。

講談社さんが危惧した部分は作中で"男女の性にもとづく役割を強調している"部分で、「男は男らしく女は女らしくするべき」というメッセージが断定的に読み取れることだと伺っています。
(私への窓口はマンガボックスさんの担当編集氏なので、伝聞になっています)
これに対して起こるかもしれない性的マイノリティの個人・団体からのクレームを回避したい、とのことでした。

(中略)

この作品は男女の性別の行き来が可能になった世界を描いています。
その世界ではセクシュアリティに特に疑問を持たない、無関心な人たちは「男(女)が好きなら女(男)になれば良いのでは?」と考える人が比較的多いのではないか、と考えていました。
そして物語が進む中で主人公はヒロインをはじめとして性の越境を行った人に触れる中で、こうした無関心から来る考え方にすこしづつ疑問を抱いていき、最終的には多様な生き方に寛容な考えを持たせていくつもりでおりました。
ここの描写は背景世界の説明の一部であり、主人公の変化を描く過程の一部でした。

問題となった描写は作品世界内の個人の発言でしか無いこともあるし、それが現実世界において好ましくない意見だとしてもいずれ作品総体としては否定されていく意見であるので、最終的には問題なくなると判断していたのです。
また第5話執筆前後でのマンガボックス編集部との打ち合わせにおいても、ここは問題になるまいという判断がされていました。
しかし、単行本化に当たって問題となって浮上してきたわけです。

(中略)

結果、本来作中で肯定する意図のない(むしろ後に否定したい)部分が問題となって発行中止となるのは無念でなりません。

(上記事より引用)

性的マイノリティから実際にクレームがあったわけではなく、あくまでそのリスクを回避するための決定であるようです。

このことが非常に残念でならないのは、作者さんの言うように
(むしろ後に否定したい)部分が問題となって発行中止」となったことでしょう。

これは「問題提起それ自体を封殺する」行いです。
作者が込めている意図は説明されるまでもなく、作品を読めばわかることです。

元記事には問題とされた作品のワンシーンが公開されています。
バーチャルリアリティの世界で女性となり、女性と恋をしたいという願望のある主人公。
それをバーチャルリアリティで実践しようとしたところ、「恋人」として男性がログインしてきます。
男性がやってきたのに驚き、「美少女にチェンジ!」と慌てふためく主人公。
しかし「女性と恋をしたければ男性に性選択すればいい」という男性が主人公を押し倒し…という場面。

この場面を見るだけで作品の意図はだいたい理解できるでしょう。
主人公は「女性として女性と恋をしたい」のにそれが叶わないことを経験することで
多様な生き方に寛容な考えを持つようになっていく。その過程を描く物語なのだ、と。

こうして「問題提起」それ自体を封殺するという行いは作品の多様性を否定します。
たとえば戦争を経て平和を手にするという物語の「戦争」の描写が不謹慎とされてしまう…という事態も想定できます。

そしてこれとはまた別の問題として、「性的マイノリティ」への差別があります。
「性的マイノリティ」がクレームをつけてくるという負のイメージ。
まるで見境なく何にでもクレームをつけてまわっているかのように語られることも少なくありません。
連載終了に至ったのは、作者がむしろ否定したいと思って描いた箇所に
「性的マイノリティ」がクレームをつけることが想定されたことが理由であると説明されています。
このことも、「性的マイノリティ」が見境なくクレームをつけるかのように考えられていることを示しています。

そして今回のような発表があったことで、ますますそのイメージが確固たるものになりかねません。
「クレームを回避するため」とあることから現時点で苦情は寄せられていないことが推測されるのにも関わらず…です。

マイノリティである以上、権利の主張をすることも当然あります。
それをまるで見境なくつけてくるクレームと同じようにみなされる、ということに問題があると言いたいのです。

 

この2つの騒動は「性的マイノリティ」という存在への恐怖が背景にあると思います。
そのため、解決策としての「ゾーニング」が一時的には有効であったとしても、異性愛などと切り離したことで「知らないもの」への恐怖心を煽られ、事態がより悪化する場合も考えられることは指摘しておきたいです。

ボーイズラブ作品と性の描写については、腐女子としてもいろいろと思う所がありますので、また別の機会に詳しくお話することができればと考えています。

 

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