ミチクサダイアリー

飽き性を克服するべく、もう一度だけ挑戦することにしました。ブログ。

本屋に貢献しているのはむしろ「初心者」の方である

なんだか炎上気味のこちらの記事↓に突っ込みを入れつつ、私見を述べてみたいと思います。

これによると
「初心者」はいきなり真ん中あたりのページをぱらぱらめくる、
「玄人」はまず目次を先に見て、本の内容・構造を把握する、という違いがあるそうです。

さあ、突っ込みを入れていきましょう。

突っ込み①「初心者」の対義語は「熟練者」、「玄人」の対義語は「素人」。対比としてちょっとおかしい。

突っ込み②「目次を先に見る」ことで本の内容・構造が把握できるのは新書や専門書に限られる

突っ込み③そもそも本屋における「初心者(あるいは熟練者)」ってなんなんだ。

私が気になったのはこの3点です。
①についてはこれ以上言うまでもありません。②から見てみます。

◆新書や専門書を選ぶなら「目次を先に見る」べし。

ただし、これだけだと不十分です。
私が新書・専門書を選ぶ際に注意しているポイントを挙げてみようと思います。

①「本を読み、そこから何を知りたい・学びたいか」をはっきりさせておく。
②奥付の確認。初版はいつ出ている?知りたいこと・学びたいことが書いてありそうか考える。
③著者プロフィールの確認。著者は何をしている人?本の信憑性を吟味する。
④目次の確認。本のだいたいの内容・構成をここで理解しておく。
➄巻末の参考文献リストの確認。ぶっちゃけ見るのはここだけでもいい。著者の思想の基礎がわかる。

①だけは最初にやっておきましょう。②~➄の順番は適当でもいいです。
ただ、この5項目はいつもしっかり確認しています。
これを怠ると「何も得られることがない本」を買ってしまう可能性がぐんと上がります。
目次先に見るべし、というところでしょうか。

 

◆「書店での(目的がある)本探し」には「初心者」「熟練者」が確かにいる。

上の記事には「本屋で『あっ、こいつ初心者だな』と見抜く方法」とあります。
それが「目次を先に見る」か否か…というものでした。
これだけだと何について「初心者」なのかがわかりません。
仮に、「書店での(目的がある)本探し」としておきましょう。これでもちょっと違う気がしますが。

結論を先に書きましたが、「書店での(目的がある)本探し」であれば「初心者」「熟練者」は確かに存在します。

私の母親は、昨秋から本屋でパート勤務をしています。
担当は文具ですが、子供の頃からの「書店員になる」という夢を叶えたため、とても楽しそうに働いています。

そんな母親曰く、書店での本探しには「初心者」「熟練者」の違いがはっきり出る…と。
つまり、本を探すことに「慣れている」か否か。

あるとき、母親はお客さんからこのような質問を受けました。
「あの…今朝テレビで見た本を探しているんですけど…あの、X JAPAN脳の本ありますか??」

一瞬、脳科学者となったX JAPANを脳裏に浮かべてしまったそうです。
(なにそれ…全然意味がわからない…茂木健一郎的な…??)
が、少し考えて(そういえば洗脳騒動で話題になった人がいたような…)と思い出したそう。
結局、その方が探している本はこれでした。

洗脳 地獄の12年からの生還

洗脳 地獄の12年からの生還

 

 脳ではなくて洗脳でした。解決。

母によると「今朝テレビで見た本を探している」けれども「見つけられない」お客さんは、
本のタイトルや著者名を控えていないケースが圧倒的多数派のようです。

要は「書店での本探し」のやり方を知らない人がいる、ということです。
母親はこういう人を「とんちんかんな質問をしてくる人」と一蹴していましたが…。

書籍を検索し、書籍情報・売り場情報・在庫の有無を印刷できる便利な機械も置いてあるのですが、
いかんせん「慣れていない」「知らない」人なのでそれを使うという発想がありません。
そもそも読みたい本のタイトルや著者名の控えがないので探しようがないのです。

さらに母は「明確にどの本を読みたいかが決まっている人は書店を利用しない時代になってきた」といいます。
要するに、読みなれている人はネットで安く買っちゃうんだよというお話。
それができない人が書店で「とんちんかんな質問」をして書店員を惑わせることになります。

そういう意味に限定すれば、間違いなく「初心者」「熟練者」はいると思います。

◆書店が生き残るカギを握っているのはむしろ「初心者」の方。

母は長年の夢だった「書店員」になってはじめて、「書店」が死にかけていることを痛感したそうです。
日常的に本を読み、本に慣れた人が書店で本を買う機会が大幅に減少している。
「本探しまでは書店でやったとしても、買うのはネットでより安く」という例も考えられますからね。

母は書店での勤務を経て、「本探し」に慣れていない人に対する接客の重要性を考えるようになったといいます。
本を探すことに慣れた人が書店で本を買わなくなりつつある今、書店で本を買うのは「本探し」に不慣れな人たち。
いうなれば「初心者」である人へのサービスを充実させることが、書店が生き残るカギになる、と母は思ったそう。

 

今回取り上げた記事が炎上気味なのは突っ込みどころが複数あるから、という理由だけでなく
まるで「初心者」を見下すような態度が見受けられたことも一因としてあるのではないかと推察します。

「初心者」は書店の生き残りの「カギ」となりえる存在です。むしろ大切にしましょう。

ただし、書店員さんが非常に困惑するので「初心者」のお知り合いの方がいる場合、
本のタイトルか著者名のせめてどちらかは控えをとるといいよ!とアドバイスしてあげてください。
提供されたヒントが少なすぎて手の打ちようがない場合もあるそうなので…。
例)「今朝テレビで見た本(タイトル・著者不明)を買いたいんですが、どれですか」