ミチクサダイアリー

飽き性を克服するべく、もう一度だけ挑戦することにしました。ブログ。

ウルトラマンが救うのをためらう日本のままでいいんですか??

今話題になっている曽野綾子さんの書いた「酷すぎる」コラムについて。


産経新聞に掲載されたコラム全文も読みました。
内容があまりに酷いので突っ込むのも大変ですが、放っておくのもなんだか嫌なので取り上げることに。

最近、21歳女子大生が本気で選んだ「オトナも楽しい!特撮テレビドラマシリーズ」12本という記事も書いたので
「特撮」の話題と絡めて「偏見・差別」の話をしてみようと思います。

タイトルでお分かりの方ももしかするといらっしゃるかもしれません。
私が取り上げようとしているのは、『帰ってきたウルトラマン』第33話の『怪獣使いと少年』という作品です。

◆『帰ってきたウルトラマン』第33話『怪獣使いと少年』とは?

<ストーリー概要(ネタバレ含む)>

人々から「宇宙人」と呼ばれ、忌み嫌われている少年がいた。少年は日々、執拗で残酷な虐めを受けている。
しかしこの少年は実は宇宙人ではなく、北海道・江差出身の日本人であった。
少年の父は上京したのち蒸発し、母は故人。天涯孤独の彼は父を追うように上京してきたのだ。

少年が飢えと寒さと恐怖で死にかけていたとき、一人の宇宙人(メイツ星人)が彼を助けた。
メイツ星人は地球人に化け、「金山」を名乗り少年とともに川原で暮らし始める。

しかし、金山の体は次第に地球の環境汚染に蝕まれていく。
地中に隠しておいた宇宙船を自力で掘り返すことができなくなった金山のため、少年は穴を掘り続けている。

その時、町の人間が大挙して川原にやってきた。
「宇宙人」を自分たちの手で退治してやる、と武器を手に持って…。

「宇宙人」と人々に思われていた少年が引きずられていく。
「宇宙人は私だ!」と叫ぶ金山は、警官によって二発の弾丸を撃ち込まれて息絶える。

そして、金山が封じ込めていた怪獣・ムルチが目覚める。
郷秀樹(ウルトラマンジャックと一体化している地球人)は人々を守るべく変身することを一度拒否してしまう。
「勝手なことを言うな、怪獣を誘き出したのはあんたたちだ」

しかし郷はMATの隊長・伊吹に促され、怪獣・ムルチと戦う。
ムルチが倒されたのち、少年は再び穴を掘り始める…。

「彼は地球にさよならが言いたいんだ」

実際に映像を見ていただきたいところですが、今回は概要を文章にしてまとめました。
作品のテーマはずばり「偏見と差別」でしょう。

この回の脚本を担当した上原正三さんは沖縄が出身。
作中の少年を北海道出身としたのは「アイヌ」を意識してのことだと思います。
さらにはメイツ星人が名乗った「金山」は在日韓国人の方に多い名字です。

「民族が違う」ことを理由にした偏見・差別…。
そして、集団心理による理不尽な暴力という重いテーマを取り上げながら、それを見事に描ききった作品です。
暴力的な表現が非常に多いですが、それを覚悟の上で一度だけでも見ていただきたいと思います。

 

◆今回の曽野綾子さんのコラムをどう受け止めるべきか

ごく簡単に問題点を挙げてみましょう。
・人種隔離を推奨している(露骨な人種差別)
・介護は女の仕事であり、なおかつ語学・衛生知識は不要だとしている

曽野綾子さんの頭の中に「国際結婚」という概念はまったくありません。すごいね。
その想定がない時点で差別の眼差しがあるのは明白です。
人種が違う者同士で結婚する人がいるという想定がない、ということだから。

肌が何色であっても人は人です。平等に権利を持っている。居住を選択する権利も。
居住を選択する権利を、一方だけが持っていいはずがないんです。

このコラムの内容に賛同する声がちらほら出ているのが怖くてたまりません。
絶対にこれを許してはいけない。

やや強引な展開ですが、ここで上記の『怪獣使いと少年』のエピソードを例えに使います。

「宇宙人」は移民です。人種や民族が違う。
人々は「宇宙人」を恐れるあまり、自分たちの手で退治しようとする。
「退治」は移民へと向けられる、あらゆる形の執拗で残忍な暴力といえるでしょう。
それが時に「居住選択の自由を奪おう」という提言の形をとって顕在化することもあるのではないでしょうか??

怪獣使いと少年』は1971年製作の作品。今から44年前ですよ!?
44年もの間があったのに、何も変わっていない。何も変わっていないんです…。

「偏見・差別」のために殺されたメイツ星人のメイツは英語の「Mates」が由来です。
その意味は「友人・仲間」…。

宇宙人を片っ端から退治しようとするのはもうやめにしましょう。
メイツ星人が少年をかばったように、宇宙人に手を差し伸べられる人になれませんか?

ウルトラマンが救うのをためらう日本のままでいいんですか??